ジュネーブ--(BUSINESS WIRE)--WIPOと研究開発型製薬会社・団体で構成される製薬業界は、医療関係者が世界中の医薬品の特許状況について把握できるよう、提携して新しいオンラインデータベースを開設しました。
Patent Information Initiative for Medicines(通称、PatINFORMED)は、特許名義人が無償で利用できるオープンアクセスデータベースから保護認容を受けた医薬品に関する特許情報を提供できるユニークなツールです。
本日運用開始されたこのデータベースでは、専用プラットフォームから医療関係者が製薬会社に直接質問することも可能です。
WIPOが世界中の研究開発型製薬会社・団体で構成される製薬業界を代表する国際製薬団体連合会(IFPMA)と提携して開設したPat-INFORMEDは、製薬業界による医薬品に関する特許情報を明確にしたいという働きかけにより実現しました。世界的に高い評価を受けているWIPOの特許情報の管理・公表能力は、今回の特許情報データベースのアクセシビリティに大きく貢献するでしょう。
WIPOがこのデータベースを管理し、新規情報の随時更新・充実化を担う一方で、
IFPMAは今回のデータベース開設のために尽力してきた研究開発型メガファーマ20社と緊密に連携し、一貫して、管理の行き届いたサービス提供を担います。
「WIPOは特許システムの透明性の向上に加え、本データベースが人々に確実に貢献するものとなるようコミットしていきます。重要な特許情報への高いアクセシビリティを提供するために官民が協力して生まれたPat-INFORMEDは、大切な医薬品の調達を容易にし、世界中の人々の保険医療を向上させるでしょう。公衆衛生の分野の成功・発展には、このような官民パートナーシップが欠かせません」と、WIPOのフランシス・ガリ事務局長は言います。「WIPOはこれまで培ってきた専門知識を活かし、複雑な特許情報をよりシンプル、よりアクセスしやすく提供するのに貢献できることを嬉しく思い、今回の取り組みを成功させるため、製薬業界と一層協力していきたいと考えています」
特許出願及び保護認容に関する情報は一般公開されている一方で、市販医薬品とその特許状況を即時確認できるツールはほとんどなく、存在する場合でも、その利用は限られていました。
具体的には、保護が認容されている特許と医薬品を瞬時に調べられるツールは、これまで一部の国の一般公開データベース(例:米国の「Orange Book」)または非公開の有料データベースのみでした。Pat-INFORMEDは、これらのギャップを埋め、特許情報を簡単かつ素早く確認することができ、世界中の医療関係者が医薬品の特許情報により簡単にアクセスできることを目的としています。
Pat-INFORMEDでは、加盟企業に直接問い合わせるためのコミュニケーション方法も用意されている点が特徴的と言えるでしょう。各参加企業(現在20社)は、特定医薬品に対して保護認容された特許に関して医薬関連会社から問い合わせがあった場合、これに回答することに同意しています。
現在、Pat-INFORMEDには600の特許ファミリー及び169のINN(世界的に認識されている医薬品の一般的名称。数多くの商品名で販売される薬品に含まれる化学物質や有効成分を特定するために使用される)に対する1万4000件を超える個別特許情報が登録されています。
「今回の取り組みは、実用的に特許情報へのアクセスをシンプルにするもので、医療関係者が長い間渇望していたものでした。Pat-INFORMEDを使うことで、公衆衛生当局は特許情報にアクセスしやすくなり、医薬品の調達方法について、十分な情報に基づいた適切な決定を下すことができ、これは世界中の保健医療の向上に大きく貢献するでしょう」と、IFPMAのトーマス・クエニ事務局長はコメントしています。「1万4000件を超える個別特許の検索や更新は大変な作業ですが、作業手順とプラットフォームが確立されたので、今後、INNを現在の160から増やし、データベースを充実させていけると自負しています」
世界基金による支援対象国を含む発展途上国向けの医薬品サプライチェーンに特化した、オランダに本部を構える世界的サプライチェーンの非営利団体、i+solutionsのウェズリー・クレフト ディレクターは「医薬品をより効率的に調達できるプロセスが確立されたことにより、適切な医薬品をスピーディに人々に提供することが可能になり、これによりたくさんの命を救うことができるでしょう」と述べた上、自身の業務にも触れ、「Pat-INFORMEDにより、低・中所得国向けの医薬品調達にかかっていた作業時間を30%短縮できるかも知れません」と話しました。
Pat-INFORMEDでは、現在、癌、C型肝炎、心疾患、HIV、糖尿病、呼吸器疾患の低分子薬剤及びこれらの医療分野外にありWHO必須医薬品モデル・リストに掲載される薬剤に関する特許情報を確認できます。今後、全医療分野・総合的医療分野にまで特許情報を拡充していく予定です。
尚、開設イベントはWIPO加盟国が出席した2018年度締約国会議と並行して開催されました。
WIPOについて
世界知的所有権機構(WIPO)は、知的所有権政策、サービス、情報、協力のために設立された国際フォーラムです。国連の専門機関であるWIPOは、加盟国191カ国が、進化し続ける社会のニーズを満たすため、バランスの取れた国際知的所有権の法的枠組みを構築できるように支援しています。また、複数の国で知的財産権の保護権利を取得したり、紛争解決したりするためのビジネスサービスも提供しています。さらに、新興国が知的所有権の使用からメリットを享受できるよう、能力強化プログラムの提供やWIPOが独自に開発した知的所有権情報のナレッジバンクへのアクセスの無償提供も行っています。
国際製薬団体連合会(IFPMA)について
IFPMAは世界中の研究開発型製薬会社及び関連団体を代表する組織です。研究開発を行う製薬業界で働く200万人を超える従業員は、世界中の患者のクオリティ・オブ・ライフを向上する医薬品及びワクチンを特定、開発、提供しています。本部をスイスのジュネーブに置くIFPMAは、国連機関と公式な連携関係にあり、世界中の保険医療の向上に貢献するソリューションを見つけられるよう、医療関係者に各種情報を提供しています。